インセカンズ
次の週の水曜日。安信が土産を持って帰社すると、営業部は途端に賑やかになった。

彼は、土産を選ぶのが上手い。こうしてたまに、話題のお菓子以外にも女性社員にだけご当地もののキャラクターグッズをプラスすることもある。

昼下がりのこの時間は外出していることが多い緋衣だが、ノー残業デーの今日は、外回りは早目に切り上げて事務処理に当てることが多い。

女性社員達がそれぞれどのグッズにするかワイワイしている中で、緋衣はふとミチルがトイレに行くと言って出ていったきり時間が経っていることに気付いて、目についたグッズを二つ手に取ると休憩の名目で部署を後にする。

最初からリフレッシュルームだと踏んで行けば案の定ミチルがいて、そこには営業所勤務の大野の姿もあった。

「ミチルー。ヤスさんからお土産もらったよ。大野も久しぶり」

緋衣が声を掛けるとミチルは一瞬びくりと肩を上げたが、緋衣を見つけるとほっとしたように「お疲れ」と返事する。

普段から冷静沈着な大野は緋衣の登場に驚くことなく、ミチルに「じゃあな」と言って立ち上がると、緋衣にも無難に挨拶して部屋を出ていった。

「ごめん。何かタイミング悪かった?」

緋衣が窺えば、ミチルは首を横に振る。

「このタイミングで来てくれて、たぶん良かったんだと思う」

そう言った彼女の隣りに、緋衣も腰を下ろした。
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