インセカンズ
亮祐と緋衣の出会いは、まるでドラマのようだった。
その日、営業職で外回りの多い緋衣が珍しく9㎝ヒールのパンプスを履いていたのは、その夜に予定していた合コンの為だった。
慣れない華奢なヒールでの通勤は想像以上に過酷で、会社の最寄駅のホームに下り立った時には足が悲鳴を上げていた。
改札に向かう人混みの中、サラリーマンの肩が緋衣に当たりよろめいて重心を崩したところ、背後から伸びてきた力強い腕が彼女のウエストを引き寄せて助けてくれた。
あわや膝を突く覚悟をしていた緋衣が思わず瞑っていた目を恐る恐る開ければ、目の前には人懐こい爽やかな笑顔があって、それが亮祐だった。
「大丈夫? よかったら、これ」
彼は、ビジネスバッグからさっと取り出したカットバンを渡すとあっという間に人混みへと紛れて姿を消してしまい、緋衣は僅かに頬を染めながらただぼんやりと、その後ろ姿を見つめるしかできなかった。
それは、初めて経験したひと目惚れだった。
次に二人が出会ったのは、その日のランチタイム。緋衣が最近話題の移動販売のお弁当を手にして、社に戻ろうとしていた時のこと。
お弁当を買って列を離れた緋衣の耳に、「あ!」と思わず漏れたような男性の声が聞こえて振り返れば、亮祐も同じ列に並んでいた。
その日、営業職で外回りの多い緋衣が珍しく9㎝ヒールのパンプスを履いていたのは、その夜に予定していた合コンの為だった。
慣れない華奢なヒールでの通勤は想像以上に過酷で、会社の最寄駅のホームに下り立った時には足が悲鳴を上げていた。
改札に向かう人混みの中、サラリーマンの肩が緋衣に当たりよろめいて重心を崩したところ、背後から伸びてきた力強い腕が彼女のウエストを引き寄せて助けてくれた。
あわや膝を突く覚悟をしていた緋衣が思わず瞑っていた目を恐る恐る開ければ、目の前には人懐こい爽やかな笑顔があって、それが亮祐だった。
「大丈夫? よかったら、これ」
彼は、ビジネスバッグからさっと取り出したカットバンを渡すとあっという間に人混みへと紛れて姿を消してしまい、緋衣は僅かに頬を染めながらただぼんやりと、その後ろ姿を見つめるしかできなかった。
それは、初めて経験したひと目惚れだった。
次に二人が出会ったのは、その日のランチタイム。緋衣が最近話題の移動販売のお弁当を手にして、社に戻ろうとしていた時のこと。
お弁当を買って列を離れた緋衣の耳に、「あ!」と思わず漏れたような男性の声が聞こえて振り返れば、亮祐も同じ列に並んでいた。