インセカンズ
「ここにいるって事は、今日残業?」
「はい。ヤスさんもですか? 今週外出が立て込んで、書類が溜まりに溜まっちゃったんです。休日出勤は嫌だから、今日中に終わらせようと思って」
「終電コースか? 何だったら、手伝ってやるけど」
「さすがにそこまでじゃないから平気です。ヤスさん、週明けから出張だし準備もあるでしょ?」
「そ? どのみち残るつもりだったし、いよいよとなったら声掛けろよ」
「ありがとうございます。じゃあ、私は先に戻りますね」
緋衣は、空になった紙コップの底を確認すると、すくっと立ち上がる。
安信にはああは言ったが、このまま雑談を交していられるほどの余裕もない。
それに、長時間二人きりでいるところを人に見られる事は避けたい。
「俺もこれ飲んで一服したら行くわ」
安信は長い足を組み直しながら、ふ、と口元に笑みをつくる。
時折、彼の笑顔には、ただ爽やかなだけではない、ほんのりと色気の様なものが入り混じる。
そんな顔で見つめられたりしたら、勘違いしてしまうのも無理はない。
笑顔の無駄打ちはやめましょうね。緋衣もまた微笑み返しながら思った。
「はい。ヤスさんもですか? 今週外出が立て込んで、書類が溜まりに溜まっちゃったんです。休日出勤は嫌だから、今日中に終わらせようと思って」
「終電コースか? 何だったら、手伝ってやるけど」
「さすがにそこまでじゃないから平気です。ヤスさん、週明けから出張だし準備もあるでしょ?」
「そ? どのみち残るつもりだったし、いよいよとなったら声掛けろよ」
「ありがとうございます。じゃあ、私は先に戻りますね」
緋衣は、空になった紙コップの底を確認すると、すくっと立ち上がる。
安信にはああは言ったが、このまま雑談を交していられるほどの余裕もない。
それに、長時間二人きりでいるところを人に見られる事は避けたい。
「俺もこれ飲んで一服したら行くわ」
安信は長い足を組み直しながら、ふ、と口元に笑みをつくる。
時折、彼の笑顔には、ただ爽やかなだけではない、ほんのりと色気の様なものが入り混じる。
そんな顔で見つめられたりしたら、勘違いしてしまうのも無理はない。
笑顔の無駄打ちはやめましょうね。緋衣もまた微笑み返しながら思った。