インセカンズ
「あれ? 残業? 珍しいね」
「あんまり無理すんなよ」
同僚が同じような言葉を残して、一人、また一人と去っていき、ついに部署は緋衣だけになった。
普段は気にする事はないが、がらんとした室内を見渡すと少しだけ心細くなってしまう。
無理はしていない。
本来の緋衣であればとっくに終わらせて、行きつけのバーで飲んでいる頃だ。
ふと気付けば、後から行くと言っていた安信がまだ戻ってきていない。
外出から帰ってそのままリフレッシュルームに向った彼は、コートを着たままだったしビジネスバックも持っていたから、残業はやめて帰ったのかもしれない。緋衣は、斜め向かいの席をちらりと見る。
パソコンがあればどこでも仕事はできるし、きっと帰ったのだろう。
緋衣もたまに仕事を持ち帰る事はあったが、オンオフの区別はきちんとつけたい性分なので、なるべく職場で終わらせるようにしていた。
再び、パソコン画面へと視線を戻す。
ふわりとキーボードに手を置くと、しんと静まり返った空間には、次の瞬間、カタカタと猛スピードでキーを叩く音が響き始める。
「あんまり無理すんなよ」
同僚が同じような言葉を残して、一人、また一人と去っていき、ついに部署は緋衣だけになった。
普段は気にする事はないが、がらんとした室内を見渡すと少しだけ心細くなってしまう。
無理はしていない。
本来の緋衣であればとっくに終わらせて、行きつけのバーで飲んでいる頃だ。
ふと気付けば、後から行くと言っていた安信がまだ戻ってきていない。
外出から帰ってそのままリフレッシュルームに向った彼は、コートを着たままだったしビジネスバックも持っていたから、残業はやめて帰ったのかもしれない。緋衣は、斜め向かいの席をちらりと見る。
パソコンがあればどこでも仕事はできるし、きっと帰ったのだろう。
緋衣もたまに仕事を持ち帰る事はあったが、オンオフの区別はきちんとつけたい性分なので、なるべく職場で終わらせるようにしていた。
再び、パソコン画面へと視線を戻す。
ふわりとキーボードに手を置くと、しんと静まり返った空間には、次の瞬間、カタカタと猛スピードでキーを叩く音が響き始める。