インセカンズ
「あ……。今日は、コーヒーの気分だったんですけど……」
いつから天邪鬼になったのだろう。迷いながらも最後はいつものを買うつもりでいたのに……。緋衣は、思わず裏腹な言葉が口をついて出たことに、言いながら自分で驚く。
「アズって、やっぱツンデレ?」
「違います! 今のは……っ」
さらりと器用な事をして見せるから意地悪したくなっただけ、とはさすがに言えず、緋衣は口籠る。そもそも彼に対して恋愛感情を抱いている訳ではないのだから、ツンデレというのは相応しくないだろう。そう思うのに、安信が横を向いて喉の奥で笑いを噛み殺していることに気付いて、顔がかーっと赤くなっていくのを感じる。どうしてか、安信といると調子がすっかり狂う。
「ほら。今日はコーヒーはやめて、コレにしとけよ」
ポーカーフェイスに戻った安信がさらに腕を突き出したのを見て、緋衣はほてりを収めるように手で顔を仰ぎながら受け取る。今さら彼のまえで取り繕っても無駄だと諦めた。
「じゃあ、週末頼むわ」
安信は言うと、喫煙室へと足を向ける。
「はい。時間あるときに打ち合わせさせてください」
「あとで資料デスクに置いとく」
「お願いします。あっ! これ、いただきます」
緋衣は、ペットボトルを顔の横で翳す。
「おう。今度、タバコ買ってな」
「じゃあ、あと2回、コレと同じものお願いしますね」
「きっちりしてんな、アズは」
緋衣がにっこり笑えば、安信は首を竦めて苦笑する。
すっかり和んでしまい、彼の背中を笑顔で見送っていた自分にはっとして、小さく溜息を吐いた。
緋衣は携帯を取り出すと、亮祐にメールする。ちょうど良いタイミングだと思った。同行する出張先は、亮祐の転勤先と同市だった。
いつから天邪鬼になったのだろう。迷いながらも最後はいつものを買うつもりでいたのに……。緋衣は、思わず裏腹な言葉が口をついて出たことに、言いながら自分で驚く。
「アズって、やっぱツンデレ?」
「違います! 今のは……っ」
さらりと器用な事をして見せるから意地悪したくなっただけ、とはさすがに言えず、緋衣は口籠る。そもそも彼に対して恋愛感情を抱いている訳ではないのだから、ツンデレというのは相応しくないだろう。そう思うのに、安信が横を向いて喉の奥で笑いを噛み殺していることに気付いて、顔がかーっと赤くなっていくのを感じる。どうしてか、安信といると調子がすっかり狂う。
「ほら。今日はコーヒーはやめて、コレにしとけよ」
ポーカーフェイスに戻った安信がさらに腕を突き出したのを見て、緋衣はほてりを収めるように手で顔を仰ぎながら受け取る。今さら彼のまえで取り繕っても無駄だと諦めた。
「じゃあ、週末頼むわ」
安信は言うと、喫煙室へと足を向ける。
「はい。時間あるときに打ち合わせさせてください」
「あとで資料デスクに置いとく」
「お願いします。あっ! これ、いただきます」
緋衣は、ペットボトルを顔の横で翳す。
「おう。今度、タバコ買ってな」
「じゃあ、あと2回、コレと同じものお願いしますね」
「きっちりしてんな、アズは」
緋衣がにっこり笑えば、安信は首を竦めて苦笑する。
すっかり和んでしまい、彼の背中を笑顔で見送っていた自分にはっとして、小さく溜息を吐いた。
緋衣は携帯を取り出すと、亮祐にメールする。ちょうど良いタイミングだと思った。同行する出張先は、亮祐の転勤先と同市だった。