インセカンズ
「アズ、聞いたよー。ヤスさんに同行するんだって? お土産よろしく~」

緋衣がミチルと共に社食で昼食を摂っていると、遅れてやってきたアミが隣りの椅子を引きながら言う。

「今週は会う同期みんなにそれ言われてるんだけど」

緋衣はうんざりした様に溜息を吐く。

「そうそう。昨日なんて、ノリコが敵意剥き出しできて高橋いる前でアズのこと牽制しててさ。ホント毎回ヒヤヒヤするんだけど」

ミチルが言えば、アミは呆れた顔をする。

「高橋も懲りないよね。ノリコのどこがいいんだろうね。さっきも誘われたからって、広報とランチデートに出掛けていったし」

「まぁ、そりゃ、可愛いしね。少し性格ひねくれてるけど」

「それ、こないだの飲み会でヤスさん言ってたよね。あれで本当はノリコの方がぞっこんだって、大野も言ってたし。そう言えば、ミチル、帰り大丈夫だった?」

「気付いたら、自分ちで寝てた」

一口大にしたハンバーグを口を入れたばかりのミチルが、もぐもぐしながら言う。

「ミチルはいいな~。いっつも彼氏迎えにきてくれてラブラブじゃん。うらやましいわー」

アミは、パスタをくるくると器用にフォークに巻き付けながら、遠い目をする。
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