インセカンズ
「アミは自業自得じゃないの? モテるのに自分で彼氏作んないだけだし」

「だってさー。この人!って思える男って、なかなかいないんだもん。妥協して彼氏作るくらいなら、今のままで十分だし」

「とは言っても28になるんだよ。地元だとさ、もう子供の一人二人いる子って結構いない? 親が結婚早かったからか、最近うるさいんだよね」

飽き飽きした口調のミチルに、アミも同調する。

「それ、うちもだよ。むすめ都会に出した段階で覚悟しといてよって話。アズんとこは?」

味噌汁を啜っていた緋衣は、ん?と顔を上げる。

「あー。うちは特殊っていうか……。焦って変な男連れてきても家の敷居は跨がせないからな、とか父親が言ってる」

過保護な父は、いつまでも自分の娘を小さな少女のままだとでも思っているようで、結婚なんて言葉を緋衣の口から切り出した時にはその場が修羅場と化すのでは……と密かに懸念しているほどだ。

「だったら、アズの彼氏パーフェクトじゃん。有名私大出身で大手デベロッパー勤務なんだから、すぐにでも親に紹介できるし。そういえば、どう、遠距離って? 私には、たぶん無理だなー。会いたい時に会えないとか。そんな時に、近くのちょっといい男に優しくされたら、ふらふら付いていっちゃいそうだし」

「距離ばかりは物理的にどうにもならないしね。最初は寂しさに慣れたくないって思ってたけど、やっぱり慣れてくるよね。アミが言ったみたいに、ちょっといい男になんてそうそう出会えないし、毎日粛々と過ごさせていただいてますよ」

この一、二年の間に、同期の女性社員が相次いで結婚した事もあり、同期で顔を合わせると結婚の話が話題に上ることが多くなった。だからといって具体的に結婚を考えられる訳でもなく、こうして話していても、まだまだ他人事のような気もしている。とはいえ、適齢期という言葉に縛られているのも間違いではなかった。

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