インセカンズ
安信が緋衣の携帯を覗き込んできて、二人の距離がぐっと縮まる。ふわっと香ってくる柔らかい香りに、安信は緋衣に尋ねる。
「アズ、甘い匂いするな。バニラか? これ、どこの香水?」
「ボディークリームですかね? 会社では香水つけないので」
学生時代は香水が好きでその日の気分によって変えていたが、社会人になってからは仕事では控えるようにしていた。その代わり、バスタイムの後に保湿を兼ねてボディークリームを愛用している。
「俺、この香り好きだわ」
安信は言いながら、ふと画面をスクロールする彼女の指先に目を留める。短めに切りそろえられている爪は、シンプルなフレンチネイルが施されている。
「そういえば、こないだアズが泊まった日、シーツにこの匂い残ってたわ」
「えっ? まさか、私が帰ってから変えなかったんですか?」
「なんで? いい匂いしたから、そのまま何日か使ってたよ」
「……変態ですね」
緋衣は呆れた声を出す。
「変態ときたか。まぁ、セクハラって言われるよりマシか?」
けれども、安信に堪えた様子はなく腕組みをしながら首を捻る。緋衣はそれを見て、諦めたように小さな溜息を吐く。
「どっちがマシとか、そういう次元ではないと思いますけど。お店、どこにします?」
「軽く一杯やるだけだし、アズに任せる。おまえのセンスを確かめたい」
「確かめてどうするんですか? じゃあ、バーテンダーがイケメンだって投稿してある、ここにしますよ」
緋衣は、ふと目に留まった店を指差す。
「はっ。おまえ、嫌な女だな。そういう事は敢えて言うんじゃねーよ」
「敢えて言ったんですけど」
「何? 俺に嫉妬させたい訳?」
安信は、わざとその声に色気を乗せて緋衣を一瞥する。
「アズ、甘い匂いするな。バニラか? これ、どこの香水?」
「ボディークリームですかね? 会社では香水つけないので」
学生時代は香水が好きでその日の気分によって変えていたが、社会人になってからは仕事では控えるようにしていた。その代わり、バスタイムの後に保湿を兼ねてボディークリームを愛用している。
「俺、この香り好きだわ」
安信は言いながら、ふと画面をスクロールする彼女の指先に目を留める。短めに切りそろえられている爪は、シンプルなフレンチネイルが施されている。
「そういえば、こないだアズが泊まった日、シーツにこの匂い残ってたわ」
「えっ? まさか、私が帰ってから変えなかったんですか?」
「なんで? いい匂いしたから、そのまま何日か使ってたよ」
「……変態ですね」
緋衣は呆れた声を出す。
「変態ときたか。まぁ、セクハラって言われるよりマシか?」
けれども、安信に堪えた様子はなく腕組みをしながら首を捻る。緋衣はそれを見て、諦めたように小さな溜息を吐く。
「どっちがマシとか、そういう次元ではないと思いますけど。お店、どこにします?」
「軽く一杯やるだけだし、アズに任せる。おまえのセンスを確かめたい」
「確かめてどうするんですか? じゃあ、バーテンダーがイケメンだって投稿してある、ここにしますよ」
緋衣は、ふと目に留まった店を指差す。
「はっ。おまえ、嫌な女だな。そういう事は敢えて言うんじゃねーよ」
「敢えて言ったんですけど」
「何? 俺に嫉妬させたい訳?」
安信は、わざとその声に色気を乗せて緋衣を一瞥する。