インセカンズ
リフレッシュルームの自販機でお茶を買うと、さっそく包みを開ける。
「おいなりさんと筍の炊きもの!」
いただきます、と手を合わせて、先ずは稲荷寿司に箸を運ぶ。
甘さ控えめのダシの味がきいた油揚げ、酢飯にはゴマと紅ショウガが混ぜてある。どこかの小料理屋に連れていかれたのだろう。
黙々と食べ進めながら、合間にお茶を飲む。
あっという間に平らげると、ようやくお腹が落ち着いた。
安信は何もいらないと言っていたがコーヒーくらい差し入れして帰ろうと、緋衣は部署に戻る。
けれども、照明は既に消えていてそこには誰の姿もなかった。
まさか、私の為に戻ってきた……?緋衣は、安信の普段の行動を思い出す。
安信が残業する場合、どんなに遅くても20時半を超えない程度。ましてや要領の良い彼が、残務を残して出張に行くとは考えられない。そうなると、出張に持っていく資料を取りに戻っただけか、別の用事があったからという事になる。
部署には寄らずそのまま帰るように言ったのは、それを悟られて変に気を遣わせない様にする為だったとしたら。
「――それじゃあ、モテるよね」
緋衣は、手のひらの缶コーヒーに目を向ける。
ふと、この缶コーヒーのキャッチコピーは、【頼れる兄貴とこの一杯】だったっけ?と思い出した。
「おいなりさんと筍の炊きもの!」
いただきます、と手を合わせて、先ずは稲荷寿司に箸を運ぶ。
甘さ控えめのダシの味がきいた油揚げ、酢飯にはゴマと紅ショウガが混ぜてある。どこかの小料理屋に連れていかれたのだろう。
黙々と食べ進めながら、合間にお茶を飲む。
あっという間に平らげると、ようやくお腹が落ち着いた。
安信は何もいらないと言っていたがコーヒーくらい差し入れして帰ろうと、緋衣は部署に戻る。
けれども、照明は既に消えていてそこには誰の姿もなかった。
まさか、私の為に戻ってきた……?緋衣は、安信の普段の行動を思い出す。
安信が残業する場合、どんなに遅くても20時半を超えない程度。ましてや要領の良い彼が、残務を残して出張に行くとは考えられない。そうなると、出張に持っていく資料を取りに戻っただけか、別の用事があったからという事になる。
部署には寄らずそのまま帰るように言ったのは、それを悟られて変に気を遣わせない様にする為だったとしたら。
「――それじゃあ、モテるよね」
緋衣は、手のひらの缶コーヒーに目を向ける。
ふと、この缶コーヒーのキャッチコピーは、【頼れる兄貴とこの一杯】だったっけ?と思い出した。