インセカンズ
一人暮らしのマンションに着くと、出掛けに開け放ったカーテンを閉めて、それからテレビをつける。

昔から変わらない緋衣の習慣だ。

その後、一人分の夕食の支度をして食事を済ませ、一段落ついたところでシャワーを浴びる。上がってきたら喉の渇きを癒す為にコップ一杯の水を飲んだ後、デザート片手にワインを開ける。ベッドに入るまでの間、ここまでが一連のパターンとなっている。

今夜は会社で食事を済ませてきた為、シャワータイムを終えてリビングに戻ってきたところだ。

緋衣が暮らす部屋は小さめの1LDKで、社会人二年目の時に実家から引っ越してきた。

卒業旅行で訪れたモルディブの水上コテージが忘れられず、アジアンテイストでコーディネートした室内は、インテリアのブラウンとファブリックのオレンジで統一されていて、アクセントとして鮮やかなブル―の小物が置いてある。

「確か、プリンあったよね」

ドライヤーで乾かしたあと丁寧にブラッシングした鎖骨まであるセミロングの髪を耳に掛けながら、冷蔵庫の扉を開ける。

三個パックの最後の一つが残っていた。
アルミ箔の蓋に視線を落とすと賞味期限を一日過ぎていたが、気にせず封を開ける。
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