メランコリック
帰ろうとしていた俺は振り向く。
交際を拒否ってから、目立って絡んではこなかったこの人。勿論、仲は良くしてきた。

だから、こんな剣呑な顔をされる覚えがない。


「いいッスよ?どうしたんですか?」


俺は笑顔を作って答える。
兵頭さんが立ち上がった。


「藤枝汐里と付き合ってるの?」


「は?なんスか、それ」


俺は心中の動揺を押し隠して、平然と答えた。


「バイトの中村が見たって。相良くんとあの女が同じ電車で一緒に帰ってたって。相良くんが本社に行ってた日に」


俺は舌打ちしたい気分になった。
なんで、女ってそういうモンを見たら黙っておけないんだろう。
まあ、そんなモンか。俺と藤枝の取り合わせなんて、こいつらからしたら奇異だもんな。
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