メランコリック
相良は今、私がなびかないから躍起になっているだけなのだ。
本質的にはいじめてきた時と変わっていない。嫌悪を好意にすり替えているだけだ。
私が反応を返すのを待っているだけ。

真に受けて、彼に接近したら、きっと手のひらを返される。
相良の気持ちは恋ではない。ただの執着だ。
うまくいかないゲームに対する負けず嫌いな執着でしかない。


『明日戻るけど、食事はいけない』


私の返信に相良が再び連絡してくる。


『せっかく誘ってんだから、言うこときけ』


こういう態度は、私だってムカつく。
いちいち言い返さないのは、面倒だったから。
メールで横柄な態度をとられたら、返信しなければいい。

私が返信せずに帰宅したのは翌日の夕方。
日も落ちきった18時半。

なんと、アパート前で相良が待っていたのだ。


「ストーカー?」


私は不快に思うより先に、つい心配な気持ちになってしまった。
一体いつから、何時間待ったんだろう。
表は小雪のチラつきそうな曇天だ。
< 138 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop