メランコリック
「ストーカーってなんだよ。どんだけ自惚れてんだ」


心配を口にしなかったのは、意識的にだ。
あまり親しくしてはいけない。そう思いながら、鼻を寒さで赤くして近付いてくる相良を見て、つい口元が緩んでしまった。


「メール返せよ」


「ゴメン」


「つか、ラインやれよ、おまえ。いちいちメールとか面倒」


だったら、メールしなければいいのに。
連絡がほしいなんて頼んでない。

相良は勝手だ。
だけど、この男の態度に混じる妙な感情に気付いてから、私は彼を邪険に扱えなくなってしまった。

以前のように、無視できれば楽だし、その方が絶対お互いのためだ。


「ほら、メシ食いにいくぞ」


相良が私の手から荷物の小さなボストンバッグをひったくった。


「あ、荷物置いて来いよ。おまえんちソコなんだから」

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