メランコリック
「……東京のはずれ」


「親、離婚してんだっけ。実家はどっちの?」


本当のことを話したら、相良は引くだろうか。どうやら、一般的で幸せな家庭に育ったらしい相良駿吾。
引いてくれたら、その方がいい。
私ははっきりと言った。


「父親の。でも父親はアル中に肝臓ガンで今、東北の療養所にいる」


相良の目が私を射抜く。
ファミレスの喧騒の中、おおよそ似つかわしくないこのやりとり。


「父のアルコール中毒で家庭が壊れたの。母は出て行ったし、父は働かないし理性もほとんど残ってないから、私は祖父母に育てられた」


相良がドリンクバーのコーラをぐいっと飲んだ。
そして言った。


「ふーん、そんなのよくある話だろ」


あんまりないかもしれないけど。

私は相良の反応が予想外なので、少し驚いた。
相良が目を細め、私を陰険に見つめる。
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