メランコリック
怒り
藤枝へのいやがらせは続いている。
俺が一緒に帰る日は必ず、あいつの荷物が荒らされている。
最初の件で注意深くなった藤枝は大事な物は持ち歩き、ロッカーの中にはたいしたものはいれていない。
それだって、自分の持ち物が床にぶちまけられているのは不快に違いない。
俺と帰る日は必ずこうなっているらしい。
兵頭は何がしたいのだろう。
荒らしの犯人を俺に仕立てたい?
いや、俺に見せつけたいのだ。
あんたの態度のせいで、大事な女が嫌な目にあってるよって。
ムカつく。嫌な女。
だけど、そんな女ひとり丸め込めなかった俺の責任だ。
藤枝には「守る」なんて言った手前、俺にできることってなんだろう。
兵頭と二人店舗の締め作業を終えた後、俺は彼女を呼び止めることにした。
「なに?」
今にも帰ろうとエプロンを外す彼女。俺は仁王立ちで兵頭を見据える。