メランコリック
藤枝は寝ていたわけではないだろうが、静かで落ち着いた声だ。
「これから家の近くまで行くから、ちょっと顔だしてくんねぇ?」
藤枝は困惑していたようだったが、俺の申し出に応じた。
徒歩10分で藤枝の住むアパートに着く。
もう一回スマホを鳴らすと、すぐに藤枝が出てきた。
コートにブーツ。でもその下が部屋着なのがわかる。
シャワーの後なのか、毛先が少し濡れた短い髪に胸がぎしっと痛む。
俺のせいで切られてしまった髪だ。それは俺がしてきたことを、まざまざとあらわしている。
「相良くん、何か急用?」
無造作に近付いてきた藤枝の右手をつかむとそのまま引き寄せた。
暗闇の路上で藤枝の細い身体を抱き締めた。
しなるくらいきつく、たまらない愛惜が胸を乱す。
「相良くん……苦しい……」
藤枝が小さく抗議する。俺は藤枝の濡れた髪に顔を埋め、言った。
「藤枝、ごめん」
「これから家の近くまで行くから、ちょっと顔だしてくんねぇ?」
藤枝は困惑していたようだったが、俺の申し出に応じた。
徒歩10分で藤枝の住むアパートに着く。
もう一回スマホを鳴らすと、すぐに藤枝が出てきた。
コートにブーツ。でもその下が部屋着なのがわかる。
シャワーの後なのか、毛先が少し濡れた短い髪に胸がぎしっと痛む。
俺のせいで切られてしまった髪だ。それは俺がしてきたことを、まざまざとあらわしている。
「相良くん、何か急用?」
無造作に近付いてきた藤枝の右手をつかむとそのまま引き寄せた。
暗闇の路上で藤枝の細い身体を抱き締めた。
しなるくらいきつく、たまらない愛惜が胸を乱す。
「相良くん……苦しい……」
藤枝が小さく抗議する。俺は藤枝の濡れた髪に顔を埋め、言った。
「藤枝、ごめん」