メランコリック
その日の昼休憩、俺はスタッフルームで買ってきた弁当を広げていた。前にはアルバイトの武藤と中村がいる。武藤は唯一の男性バイトでフリーター。横にいる女子大生バイトの中村と付き合っている。


「実際、あの女と喋る人いるんすか?」


武藤がつり上がった口の端をさらにつり上げて言う。
こいつ、絶対クラスにひとりいるいじめっこのタイプだよな。


「いないね。強いて言うなら、品川店の緑川笙子(みどりかわしょうこ)が大学一緒って言ってたな。あいつとは少し喋るんじゃねーの、知らないけど」


俺は極力興味無さそうに言う。


「友達いなさそー。あーいう人クラスにいたわ。ひとりぼっちの暗い女」


中村も可笑しそうに言う。黙ってりゃイケてんのに、悪口を言う女の顔って醜い。


「彼氏もいたことないんじゃないスか?処女くせーもん。俺は絶対ムリっすね、あーいう陰気な女。たたないッス」


武藤が調子にのって下品なことを言う。藤枝だって、おまえ相手じゃ感じねーよ、と俺だって知りもしないことを考える。
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