メランコリック
「ひとりで帰るから」


「じゃあ、そうしろ。俺は後からついていく」


今日は譲る気はないらしい。
私は無言で歩き出し、後をついていくという相良はちゃっかり横を歩き出した。


「バレンタイン、期待してたんだけど」


相良は私が避けていてもペースを崩すことはない。


「あげる理由ない」


「友チョコ」


「友じゃない」


「じゃ、おまえん中で俺って何?」


会話するのが嫌になり、私はうつむいた。
そうして黙々と歩く。乃木坂の駅につき、メトロに乗り、渋谷で乗換えても黙っていた。
相良は好き勝手に喋って、私の反応を強制する。
だけど、私は拒否のため黙っていた。


「いい加減、口聞けよ」


最寄り駅に到着し、改札を抜けると相良が私の手首をつかんだ。
この前もここで言い争いになった。
< 171 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop