メランコリック
私は嫌な気分で、手を振り払った。そして、自分の家に向かい歩き出す。
相良が当然のごとく追ってきた。


「痛いところ突かれたからって無視か?」


「黙って」


「俺がおまえに絡まなけりゃ、満足かよ」


私は路上で相良に向き直った。


「最初からそう言ってる。ひとりでいたいから放っておいてって」


「根暗で不幸気質。あげく、本当は世界中に対して怒り狂ってる。大っ嫌いだ、おまえの思考」


「嫌いでいい。私から離れて!」


「やだ!」


相良が子どものような頑固さで、怒鳴り返した。
道行く幾人かの帰宅者が私たちを見る。


「俺はおまえが嫌いで、好きだから、おまえから離れない」


「バカみたい」
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