メランコリック
私は相良を置いて逃げ出そうとする。
身体をねじろうとすると、相良の強い力が私を制した。
両手が私の両肘をつかむ。間近に見える相良の顔。


「バカでいいよ!いいか?聞け」


吐き捨てた私の言葉を受け止めるように、相良が茶色の澄んだ双眸で私を見据えた。



「離れて無くならない絆もあるんだよ。俺が教える」




不意に放たれたその言葉の重み。
私は殴られたような気持ちになった。

離れても無くならない絆。

両親に去られ、最初の絆はなくなった。
育ててくれた祖父母だって、私より先にいなくなる。
結局孤独しか私のもとには残らない。

みんな私を置いていく。
そんな無限の暗闇に、相良の言葉は差し込んできた。

一筋、光が射したようだった。
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