メランコリック
馬鹿らしい。くだらない。
これだから、何不自由なく育った人間は。
意識が根底から違う。


相良の言葉を全否定しながら、一方で私の瞳からは涙が溢れていた。


相良に抱き締められ、愛を、未来を誓われ、どうしようもなく救われる私がいた。

誰かに言ってほしかった。

『離れない』って。
『傍にいる』って。

本当は音の消えた静かな世界になんていたくなかった。
ひとりで植物のように朽ちていくのは寂しかった。

だけど、誰かに期待するのは怖くて、手を伸ばせなかった。


「藤枝……、汐里、俺と一緒にいてくれよ。おまえのどうにもなんない孤独を、怒りを、俺が引き受けるから」


私は泣きながら、それでも精一杯の力で相良を突き飛ばした。
相良がよろけて一歩下がる。
私も退き、距離をとって対峙する。
< 175 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop