メランコリック
さよならメランコリック
汐里がいなくなった。
あの事件の後、すぐに連絡がつかなくなった。
朝、気付かないうちに出て行ったと知ったときは、お互い仕事があるし、そんなものだと楽観視していた。
汐里は顔が腫れているだろう。騒ぎも大きくなれば休むかもしれない。
しかし、あいつの性格上、今日のところは一応出社するんじゃなかろうか。
遅番で自由が丘の職場に出ると、すでに杉野の噂が流れていた。当事者の俺はバイトたちに心配され、笹原マネージャーに事情を聴かれた。
午後には今度は警察で聴取があるとのことで、警察署に出かけ、帰宅できたのは深夜。
汐里にメールはうったけれど、返信はなかった。
翌日、返信がないことも心配だったし、俺は仕事の後、汐里の部屋を訪ねた。
しかし、汐里の部屋には灯りがついていない。玄関横の擦りガラスには、洗剤やら靴の防水スプレーやら、汐里の私物が見えた。
もしかすると、部屋にいたくないから、ホテル暮らしでもしているのだろうか。
俺は汐里に電話をかけた。
夜22時だ。