メランコリック
汐里は出ない。

何度かけても出ない。


杉野は警察で留置されている。だから、身の危険はないはずだ。
でも、なんで電話に出ない?

俺はあの晩助けてくれた隣の部屋のチャイムを押した。
出てきたカップルの女の方が言った。


「昨日の朝、カーディガンを返しに来てくれましたよ。御礼と汚してしまって申し訳ないって。弁償するって言うから、そんなたいしたものじゃないって言ったんです」


「しばらく留守にしますとも言ってたな」


男の方も言った。
やはり、ホテルあたりに居を移したのかもしれない。

俺は二人に礼を言い、汐里のアパートを後にした。


『汐里、大丈夫か?今どこにいる?』


メールをうち、また電話した。
しかし、汐里は電話に出なかった。
< 193 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop