メランコリック
翌日、俺の部屋に荷物が届いた。
汐里に貸したスウェットが綺麗に洗濯され、入っていた。

俺は送り状の住所を見たけれど、汐里の帰っていないアパートになっていて、手がかりはない。
ふと、スウェットの下に一枚紙切れが挟まっているのを見つけた。

メモ用紙に走り書きのような文字。
同じ職場だった俺には、その字が汐里のものだとよくわかった。



『ありがとう。
手に入れば、失う日が恐ろしい。
勇気を持てなかったことを謝ります』



失う日……。
俺はその紙きれをぐしゃっと手の中で潰した。


「信じるって言ったのに。嘘かよ、あれは」


噛み締めた唇から血の味がする。
それでも俺はぎりっと唇に歯をたて、どうしようもない悔しさと行き場のない悲しみを噛み潰す。


「俺は、どこにもいかないって誓ったのに。なんで、おまえが消えるんだよ」


汐里のアパートは翌週には業者が片付けて空になった。
そして、俺は藤枝汐里を見失った。



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