メランコリック
あれから、緑川のツテで汐里の行方を捜し続けた。

大学の同期や卒業アルバムにも、汐里の実家がわかりそうなものはなく、そもそも友人すらほとんどいない汐里を知る人間は、なかなか見つからなかった。
大学側に連絡しても、個人情報を教えてくれるはずもない。

そんなことを続けるうち、季節は夏になった。

汐里がいなくなってから、半年近くが経っていた。





その日、俺は緑川からのメールを受け取って、電車に乗った。
記載の駅名は東京のはずれで片道だけで2時間近くかかる。

電車に揺られながら、様々なことを考えた。

起こり得るシーンを想定して、返答を考えてみる。
無駄だ、きっと、俺の思うとおりにはいかない。

相手はそういうやつだ。


目的地の駅に着くと、教えられた駅ビル内のインテリアショップに向かう。

俺たちが働いていたのとは全く違うファンシーな小物ばかり扱う小さな店のレジに、探していた女の姿を見つけた。


エプロンを着け、少し伸びた黒髪で、客に対して自然に微笑んでいるのは、
藤枝汐里だ。
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