メランコリック
「もう誰も好きにならないよ」


俺の背中を汐里の声が追いかけてきた。
涙でひっかかり、かすれた声。
その声が懸命に言った。



「私はもう充分、明るい光をもらったから」



あなたに。




それが聞こえるかどうかの間に、俺は振り向いていた。

せっかく、こっちから離れようと思ったのに。
台無しだ。
男の決意も覚悟も吹っ飛んでしまったじゃないか。

俺は、再び汐里に駆け寄り、その細い身体を抱き締めた。
< 204 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop