メランコリック
「おまえんちのじいちゃん、ばあちゃん出かけてたりしない?そしたら、これから汐里んち行くんだけど」


「残念でした。二人とも今日は畑にしか用事ないってさ」


ちぇーと言葉にして落胆した駿吾は、椅子の背もたれに寄りかかり、天井を仰いだ。
スネた仕草は好き。付き合う前も、付き合ってからも駿吾は結構子どもっぽい。

彼の下心がポーズなのは知っている。
今、彼はそんな気になっていない。私を気遣う方が優先事項だから。


「この後、どうする?A駅にでかい本屋あるだろ?そこ行かね?」


駿吾が今日のデートプランを提案してくる。何もない私の地元周辺で、二人で楽しめるところを探してくれる彼は、本質的に面倒見のいいマメな男なのだろう。


「それもいいけど、反対側の電車に乗らない?」


「どこ行くんだよ」


駿吾が訝しげな顔をするのも無理はない。私が言うのは更に山間に向かう電車だ。


「もうちょっと山の方にトレッキングコースがあるんだ。ちょっとだけお散歩。どう?」
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