メランコリック
もっと言えば、兵頭さん本人もこのいたずらを知っていた。
彼女は撮影隊の相手をする時間が長いほど、仕事がサボれるし、藤枝が困った顔をするのも見たいと、この案にのってきた。


「藤枝さん!ちゃんとチェックしたの!?それとも私に恥かかせようとした?わざと!?」


兵頭さんがヒステリックに叫ぶ。
杉野が俺たち三人のことを訝しむように見つめてから、口を開いた。


「藤枝、どうなんだ」


確認する声は教師のように公平な声。

藤枝を見ると、驚くことに彼女はまるで表情を変えていなかった。
凍りついているわけではない。
あまりにいつもどおりの、余裕すら感じられる平坦な表情だった。


「わざとではありません。ですが、私の確認ミスです。申し訳ありませんでした」


感情のこもらないいつもの口調で答え、藤枝は頭を下げた。
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