メランコリック
兵頭さんがやや面食らった様子を見せた。しかし、すぐにまつげとアイラインでくっきり縁取られた目をつり上げる。


「謝って済む問題?商品が壊れてるなんて、すぐ気付くはずなのに、目ぇおかしいんじゃないの?」


「すみません」


藤枝は頭を下げるだけだ。
俺や兵頭さんが楽しみにしていた、慌てる藤枝にはお目にかかれそうもない。


「兵頭、もういいだろ。藤枝も今後は気を付けてくれ」


マネージャーの杉野の一声に、兵頭さんは矛を納めざるを得ない。
藤枝はもう一度、兵頭さんと杉野に頭を下げ、仕事に戻った。

俺のモヤモヤとした苛立ちはおさまらない。



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