メランコリック
その日の夜だ。

早番の兵頭さんは帰り、バイトたちも帰った。
俺は撮影の関係もあって、通し勤務という長時間勤務だ。
俺はレジを閉めながら考える。

杉野はたぶん気付いていた。藤枝の過失じゃないって。
だから藤枝を叱責しなかった。

武藤たちバカが、わざとらしく全部のモビールに細工なんかするからバレたんだ。
もうちょっとやりようがあるだろ?
あー、アホばっか。くだらねぇ。

それにしたって、なんで藤枝は言わなかったんだか。
あいつがチェックミスすることなんてあり得ないのは、杉野も知っている。
自分じゃないって言えば、杉野だって疑念を言葉にできただろう。

ま、そうなりゃ、まずいのは武藤たちだし、俺や兵頭さんもグルだってバレかねないけど。


スタッフルームに入ると、まだ藤枝が居残っていた。
今日のモビールの件の破損報告書を書いていた。
初期不良品なら、メーカーに突っ返せばいい。

それをしないのは、藤枝だってわかっているのだ。
自分に仕掛けられた悪意だってことは。

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