メランコリック
「それだけで夜までもつのか」


それだけとはサンドイッチ1パックのことだろうか。
私は頷いた。


「一度にたくさん食べられないから」


「そんなんだから、声も身体も貧相なんだよ。接客業だぞ、俺らは」


身体が貧相なのは、放っておいてほしい。
でも、声が小さいのは申し訳ない。それは、自分でもそう思う。
兵頭さんみたいにハキハキ接客できた方がいいに決まっている。


「声は、気をつける」


「おまえ、焼肉とか行かないの?」


相良はまだ私に何か文句をつけたいのだろうか。
何を言っても意地悪な言葉しか返ってこない気がする。私としては、もう会話を止めたい。


「行かないよ」


私は短く答え、自分史上最速のスピードでサンドイッチを食べきった。
ペットボトルのお茶でごくんと飲み下すと席を立つ。


「おい、休憩残ってんだろ?どこ行くんだよ」


「……薬局に、行く用事があるから」


私は今度こそ踵を返し、足早にスタッフルームを出た。
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