メランコリック
讒言
まずいな。
液晶画面を見ながら思う。
自分の部屋、久しぶりにレンタル店でAVなんかを借りてみた俺。
画面に映る女優のエロい姿を見ながら、自家発電……なんて思ってたら、気付いてしまった。
この女優、藤枝汐里に似てる。
かなり似てる。最初は髪形だけかと思ってたけど、目元も似てる。
まずいだろ、これじゃ俺、同僚で抜くことになっちまう。
しかも藤枝だぞ。俺の大ッ嫌いな藤枝で。
脳裏に過ぎる、一昨日のやりとり。
『俺のこと好きだろ』
『うん、そうかもね』
あの時、あいつどんな顔してた?
いつもどおり無表情だった?
それとも、恥ずかしそうにしてた?
ダメだ、思い出せない。
俺は俺で、思わぬ答えに焦って、あいつの表情を見る余裕がなくなってしまった。
きっと、俺と会話したくないからテキトーに頷いただけだ。
でも、もしかして100分の1くらいの確立で、そこに真実が混じっていたとしたら?
藤枝が本当に俺のことを好きだったとしたら?