メランコリック
藤枝汐里（ふじえだしおり）、23歳。

でも、私を名前で呼ぶ人はこの店舗にはほとんどいない。
私に話しかける人自体がほぼいない上に、みんなは裏で言っている。

暗い女。
キモイ女。
表情がなくて不気味な女。
オシャレなお店に似合わない地味で陰気な女。

それが私。

私という人間を評価し、率先して印象の流布に貢献しているのが、
同期で一緒に配属された相良駿吾。

相良は私が格別に嫌いのようだ。
すべてが気に入らなくて、一刻も早く自分の世界から追い出したいようだ。

世間的に『いじめ』と言われる行為は一年以上続いている。

でも、私にはあまり関係ない。

もともと、他人への期待や好意が希薄なのだ。
だから、多少嫌われても、面白くなく思われても問題ない。
勿論、仕事を妨害されれば少しは困るけれど、もし私の評価が下がって店舗異動の話になれば、面倒な職場からは解放される。

いじめられている認識を本人が覚えない以上、私の日々はつつがなく平穏だ。
毎日仕事をし、一人暮らしの部屋に帰り、本を少し読んで眠るだけ。
< 4 / 220 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop