メランコリック
「おい、藤枝ッ!」


私が品出しをしていると、相良が怒った顔でやってきた。
今日も彼は機嫌が悪く、私の存在が気に食わないらしい。


「なに?」


私は顔を上げ、相良の顔を見上げる。
茶色味がかかった髪と瞳は悪くない。彼は世間的には整った顔に分類されるのかもしれない。その顔が怒りに歪んでいたとしても。


「おまえみたいな陰気な女が表にいると売り上げに響くんだよ。裏口に遅れてた入荷品が着てるから整理しとけ」


彼は私より役職が上なわけではない。あくまで同期。

この店舗の正社員は、私の他に相良と二つ上の女子社員・兵頭さんだけだ。
あとは何人もいるアルバイトで成っている。序列で言えば、私に指示できるのは兵頭さんだけのはずなんだけど。


「わかった」


反論しても楽しくないので、私は素直に立ち上がる。
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