メランコリック
相良はなぜか声をひそめるように、怒声を放つ。
「だって……」
「ねぇ」
気まずそうに顔を見合わせる二人に、相良はいっそう低い声を出す。
「さっき、杉野が顔出したんだよ。おまえらが路地に入ってくの見られてんぞ。これで、藤枝が髪切られたってチクってみろ。おまえら二人、やべーぞ」
相良の言っていることはたぶん嘘だ。
杉野さんは今日大阪に出張のはずだから。
しかし、それを知らない二人は顔色を変えた。
相良はたたみかけるように、二人に小声で言う。
「今なら、俺が何とかこいつを言いくるめてチクらせないようにするからさ。おまえらは杉野に見つかんないように逃げろ」
たぶん私に聞こえない体を装うために小声になったんだろうけど、全部聞こえている。
相良もわかってやっている。
単純なのか、すっかり騙された暴漢ならぬ暴女子二人は、その場から逃走していった。
投げ捨てられたハサミがからんと路地のアスファルトに転がった。
「だって……」
「ねぇ」
気まずそうに顔を見合わせる二人に、相良はいっそう低い声を出す。
「さっき、杉野が顔出したんだよ。おまえらが路地に入ってくの見られてんぞ。これで、藤枝が髪切られたってチクってみろ。おまえら二人、やべーぞ」
相良の言っていることはたぶん嘘だ。
杉野さんは今日大阪に出張のはずだから。
しかし、それを知らない二人は顔色を変えた。
相良はたたみかけるように、二人に小声で言う。
「今なら、俺が何とかこいつを言いくるめてチクらせないようにするからさ。おまえらは杉野に見つかんないように逃げろ」
たぶん私に聞こえない体を装うために小声になったんだろうけど、全部聞こえている。
相良もわかってやっている。
単純なのか、すっかり騙された暴漢ならぬ暴女子二人は、その場から逃走していった。
投げ捨てられたハサミがからんと路地のアスファルトに転がった。