メランコリック
俺を憎んでいるだろうか。
それなら、いっそ、憎んでほしい。
あいつの中で無意味な存在でいるよりずっといい。


「相良?」


緑川の訝しげな声に、俺は思考の海から浮上した。


「とにかく、頼んだわよ。同じ職場の同期なんだから、汐里の居場所を無くすような真似やめて」


緑川が立ち去り、俺は元の輪に戻る。


胸が高鳴った。
藤枝が俺のために心を痛めていると、考えるとたまらなくなった。

藤枝の顔を見たい。
今すぐに。
あいつの本心をあいつの口から聞きたい。

傷付いている、いじめをやめてほしい。

そんな風に、あいつが懇願するなら、俺だって慈愛を持って譲歩するのに。



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