メランコリック
幼稚にもあいつが好きだからこんなことをしているんだろうか。

バカか。好きな女をいじめ抜いてどうすんだ。
今まで付き合った女の誰に聞いても、俺に意地悪い仕業をされたと答えるヤツはいない。

藤枝だけだ。
これほど気に食わないのも、これほど放っておきたくないのも。

あいつの中で、俺は変わらず無意味な存在のまま。

それがわかるだけに余計悔しい。

好かれなくてもいい。それならいっそ憎まれたい。
強い感情を抱いてもらいたい。

憎悪でも、嫌悪でも構わない。
あいつにとって何者かになりたい。


コンビニを出て、歩く。
すると、目の前に会いたかった女がいた。
本当に偶然、藤枝汐里がそこに立っていた。


「藤枝……」

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