メランコリック
藤枝は、家からコンビニに向かっていたのだろう。
防寒にと羽織った秋物のコートと、素足にサンダルのアンバランス。くだけたプライベートの雰囲気に色気を感じた。

藤枝は俺の顔を見ると、はっきりと眉をひそめた。
職場では顔色を変えないようにしているけれど、この前の一件から、藤枝は俺に「拒否」の感情を抱いているらしい。

ひとまず「無関心」からは逸脱したようだ。


「こんばんは」


藤枝は小さく言って、俺の横を通り過ぎようとする。
その細い腕をつかんだ。

藤枝が驚いた顔をして俺の手を振り払う。


「そんなにビビんなよ。自意識過剰だぞ」


俺は嘲笑った。メシの時、飲んだアルコールが少しだけ舌のすべりをよくしている。
藤枝は俺をきつい視線で見つめている。


「私、買い物あるから」
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