メランコリック
「個人的な送別会だから」


私は後ろめたい気持ちになった。
それは、私だけが「信用できる」と評されたことではなく、相良に黙って杉野さんと時間を過ごしにいくことに対する気持ちだった。

バカみたい。
たった一回キスされたくらいで。
私、自意識過剰だ。


「そのまま個人的にお持ち帰りされないようにしろよ」


「そんなことされないよ」


「おまえはどーだか知らねーけど、案外あっちはその気かもしんないぞ」


私は、あんたのモノじゃない。
あんたとは友人でもないし、同期としての仲間意識すらない。
だから、そんな心配をされる筋合いはない。

答えるのは面倒だったので、私は相良の横を通りすぎた。



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