メランコリック
私は笑顔になって、杉野さんの元に歩み寄る。
あれ?
席は向かい合わせの二人掛けだ。


「他の連中のシフトと合わなくてさ。今日は俺と二人になっちゃった。ごめんな」


飽くまで、いつもと変わらない調子で言う杉野さん。
さすがに私も相良の言葉が過ぎった。
すぐに打ち消す。

違う、杉野さんはそんな人じゃない。
奥さんもお子さんもいるのに、部下に手を出すような人じゃない。

真面目な人だと思ったから、好意を抱いていたんだもの。

私の信頼を肯定するように、それからの食事は楽しいものだった。上司と部下の関係性を維持しながら、杉野さんは色んな話をしてくれ、私は少しオーバーなくらい笑った。

2時間近く経っただろうか。
私は勧められてもアルコールを摂らない。だから、それ以上は間が持たないとは思っていた。
杉野さんが折り良く「出よう」と言ってくれる。
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