メランコリック
周囲はネオンの色味が変わっている。
行き交う人の層が変わる。
繁華街は若者や会社員の多い地区をすでに抜け、私たちが立っているのは、いわゆるホテル街だ。


「杉野さん……」


「俺も藤枝のことが好きだったよ。おまえが配属されてから、ずっと」


好きな人からの告白だ。普通なら嬉しいはずなのに、私はぞっとした。
絶対聞けないと思っていた言葉が、彼の口に上っている。
それは私が好いていた彼の人物像をぶち壊す言葉だ。


「離れ離れになる前に、気持ちの確認をしておこうよ」


杉野さんがいつもどおりの優しい微笑みで言った。
笑顔と裏腹に、私をつかまえる手は異常な力強さを見せている。

怖い。

私は思った。

同時に圧倒的な後悔を感じた。
自分の抱いてきた軽率な恋心への後悔だった。

私の思わせぶりな態度が、妻子ある男性を惑わせ、こんな行動にうつさせてしまったのだろうか。
いや、理由は私にあっても、杉野さんはそんな男じゃないと勝手に信じていた私がバカなのだ。

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