我妻はかごの中の鳥

魅せられて



彼女に会いたくて、つい帰りは早歩きになってしまう。



今日は定時に帰れた。

あれから飯塚からは避けられている、ような気がする。

それでもまあいい。仕事に支障がなければ。


「…ん?」


最寄り駅の前に、屋台があった。

甘い匂いがして、つい吸い寄せられる。

似た人が何人かいて、こぞって何かを買っていた。


「今川焼か…」


たくさんの変わり種がある店らしく、カスタードやあんこのほかに、紫芋やハムカツ、カレーとかもあった。


そのなかに

「あ」

一際目を引くものがあった。


いや、俺か瑠璃ぐらいしか目を引かないけど。

瑠璃には魅力的に見えるそれ。


「……」


気がつくと財布を出していた。
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