我妻はかごの中の鳥
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5階建ての本屋さんに時間通りについた。
ここの最上階の特設ステージが会場である。
一応作家様である俺も本屋との関わりは深いが、まあ公の場とかも出ないし、こういうのは初めてだったりする。
モデル兼タレント兼女優な彼女の二冊目の写真集ということで、人でごった返してた。
「うわ…」
人、人、人。
特設ステージの前は黒山で一杯だった。
特設ステージの通路を挟んで、向こうは普通に本があるなんて信じられないくらいに混んでいる。
可愛らしく色とりどりの風船でセッティングされた特設ステージには、でかでかと『桐生鈴花写真集発売記念!』と垂れ幕がかかっている。
桐生鈴花は弥生の芸名だ
ペンネームみたいなもん。
ちょっと訳あって家をばらしたくないから、芸名を使っている。
「…ごめん」
「ん?」
いきなり瑠璃が謝り始めたから、疑問に思い聞き返す。
「…お兄ちゃん、人込み…」
申し訳なさそうに器用に無表情を保ったまま眉を歪めて。
「ああ大丈夫」
心配してくれる瑠璃がかわいくて仕方ない。