我妻はかごの中の鳥

「……」

信用ならないのか、いまだ申し訳なさそうにじっと見つめてくる。

自分のわがままのせいで無理をさせてるのではないか、と思ってるらしい。


――いいんだよ。

お前はもうちょいわがままで。


こちらとしては、わがままを言って貰えるのが嬉しくて仕方ないんだから。

頼ってもらえるのが。

愛してもらえるのが。


どうしようもなく嬉しいんだから。



言いたくても言えない言葉を飲み込んで、瑠璃のニット帽に包まれた頭を撫でてやる。

反射的に瞑った瞳が小動物みたいで愛らしい。


「あ〜!あの美少女妹さん!?」

「…あ」


瑠璃の知り合いらしいスーツ姿の男がこちらを指差した。

瑠璃が俺から離れて、特設ステージの近くにいる男のもとへと向かう。

当たり前についていき、男が瑠璃の敵じゃないか見極める。


20代から30代のメガネの男。

くたびれたスーツにやつれたような顔から、疲れてんなコイツと把握できる。

別に瑠璃をやましい目とかで見てはないっぽい。


「…」

瑠璃がぺこりと頭を下げると、男はニコニコと笑みを返した。

「いやあ、妹さん来てくれてよかったぁ…あいつ緊張してまして」

あいつ?

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