我妻はかごの中の鳥


「よかったですねぇ鈴花」


そう言って微笑む笹田さんの存在を思い出したらしい。

だらけまくってた顔が、素になる。


「ああああ…仕事だ、そうだよ仕事だぁ…」

真っ青になりながら、それでも瑠璃は手放さず。

後ろから抱き締めたままもつれかかる。


「弥生?お前仕事大好き人間だろ?どーしたんだよ急に」


仕事が回るたびに嬉しそうに連絡をしてくる奴なんだ。

弥生には友達がいない。

強いて言えば、仲が良いのはせいぜい俺らくらいだろう。

そんな自分が輝ける場所だから大好きなのだと言っていたこいつが、仕事を嫌がってる。


確かに緊張するとちょっと嫌がるのは知ってるが、瑠璃さえ見れば明るく元気になる。

それが通用しない今回は重症である。


「あーのね…ニキビが出来ちゃって…せっかく来てくれてんのに、ニキビ野郎を見せなくちゃならないのが辛くって」


「ああ…なるほどねー」

どこにニキビがあるのか、ちょっと俺にはわからないが。

睫毛を伏せて物憂げに瑠璃を抱き締める姿から、落ち込んでることがわかった。


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