我妻はかごの中の鳥

「…わ」

なんだうちの妹。

かわいすぎんだろ。


“ニキビがあっても、万全な桐生鈴花だよ”と弥生に気づかせてやった。

たったそれだけなのに、無表情で彼女がやると愛らしさが増すのはなぜだろう?


「瑠璃ちゃ、」


うるうると、瑠璃の愛らしい慰めに涙をため、勢いのまま瑠璃に抱きつく。

もう驚きもしない瑠璃は、抵抗なく弥生を受け入れた。

「伊織ぃい!この子を私にちょうだい!一家に一台瑠璃ちゃんなきゃダメだよ今の時代!」

「それは歌月に言え!俺だって欲しいんだ!それをあいつは「…お兄ちゃん黙って」

旦那を庇った!?

酷い酷いよ瑠璃ちゃん!お兄ちゃんより旦那なのか!?そうなのか!?


「…なんなんでしょうかねぇ、この現状…」


ただひとり部外者の笹田さんが、頭を抱えながら弥生を見つめる。

まあ笹田さんから見れば異常な光景だよな、これ。


「瑠璃ちゃんは私の妹だもん」

「違うね!俺のだし!」

「……お姉ちゃん?」

「きゃぁああああ!やだ、や、やだぁああ!笹田さん!ボイスレコーダー!」

「ないです!ってか、もう時間ですから!」

「はあい」


素直に返事をした弥生に、笹田さんは目を丸くする。

今までがよっぽど酷かったのだろう。

目を丸くしたまま、そっと瑠璃に耳打ちをしたのだ。



『鈴花のほしい言葉をありがとう』と。



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