我妻はかごの中の鳥

◆◆◆


――イベントは大成功だった。


ニキビなんか誰も発見せず、ただテレビや雑誌の向こう側で輝く彼女に溺れるだけだった


弥生のサインを貰ったと、無表情の部類で喜ぶ妹。


「……」


お兄ちゃんもサイン会する?と平積みの俺の本を指差す。

「や、いいです。俺人見知りだし」

「…」

ちゃっかり『今週の売り上げランキング』の棚に俺の本を紛らす瑠璃だった。

経済の本を退け、俺の本を変わりに置く。おい、それやっちゃダメだから。


「……これから、どうする…?」


小さく瑠璃に聞かれ、戸惑う。

目的は達成したんだ。


「お昼いこうよ、時間的にもいい時間だし?」

こくんと頷く瑠璃が、ああもうかわいいなこのやろ。

抱きつきたくなる衝動のなか、俺らは本屋をあとにした。


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