我妻はかごの中の鳥
――デートの定番は、お洒落なパスタ屋さんだと自負する。
「…♪」
ほら見ろ、瑠璃ちゃん心なしかメニュー見ながら機嫌良くなってるじゃん。
俺が向かったのは、本屋から徒歩で行ける駅前のパスタ店。
来るときに通りがかって、美味しそうだなあと心に止めていたのだ。
明るいオレンジの光に包まれた、色鮮やかな店内。
ニット帽をはずした俺らの白髪は、否応なしに目立った。
ちらちらと刺さる視線に、少しだけ居心地が悪くなる。
「…」
瑠璃も同じ気持ちなのか、そっとメニュー表から顔をあげて俺を見る。
腕を伸ばして頭を撫でれば、片目をちいさく瞑った。
「決まった?」
こくんと頷く。
「あ、ねぇ瑠璃、ティラミスにキャラメル味ってゆーのがあるよ」
「…!」
どれどれ!?と探し始めたので、指を指して教えてやる。
目を輝かせて、ティラミスのキャラメル味とやらを凝視した。
…絶対頼むな、こりゃ。