我妻はかごの中の鳥

――デートの定番は、お洒落なパスタ屋さんだと自負する。


「…♪」


ほら見ろ、瑠璃ちゃん心なしかメニュー見ながら機嫌良くなってるじゃん。

俺が向かったのは、本屋から徒歩で行ける駅前のパスタ店。

来るときに通りがかって、美味しそうだなあと心に止めていたのだ。


明るいオレンジの光に包まれた、色鮮やかな店内。

ニット帽をはずした俺らの白髪は、否応なしに目立った。

ちらちらと刺さる視線に、少しだけ居心地が悪くなる。


「…」


瑠璃も同じ気持ちなのか、そっとメニュー表から顔をあげて俺を見る。

腕を伸ばして頭を撫でれば、片目をちいさく瞑った。


「決まった?」


こくんと頷く。

「あ、ねぇ瑠璃、ティラミスにキャラメル味ってゆーのがあるよ」

「…!」

どれどれ!?と探し始めたので、指を指して教えてやる。

目を輝かせて、ティラミスのキャラメル味とやらを凝視した。


…絶対頼むな、こりゃ。


< 113 / 140 >

この作品をシェア

pagetop