我妻はかごの中の鳥
呼鈴がないため手をあげて店員を呼ぶ。
高校生くらいの男の子が来た。む、瑠璃を見てる。
内心イラつきながら、「ご注文をどうぞ」のあとに口を開いた。
「えっと、ホウレン草のクリームパスタと、瑠璃は」
メニューを指差す方向には、ホウレン草のクリームパスタ。
なんと兄弟、血って素晴らしい。
抱き締めたくなったけど、我慢した。
「……ホウレン草のクリームパスタもうひとつ」
「か、かしこまりました」
「あとミルフィーユのキャラメル味を」
「!」
案の定、嬉しそうに目を輝かせた。まあ無表情の部類だけど。
「以上でよろしいですか?」
「はい」
去っていく店員を見たあとに瑠璃に視線を戻せば、なにやら紙を手にしている。
「ん?なーに、それ?」
メモくらいの大きさか。
白い紙を不思議そうにつまんでは、日に透かしたりして遊んでる。
「……店員さんが、」
はい、と渡してきた紙を捲ってみる。
使用済みの伝票を切ったものらしく、裏面の白い部分に名前とメアドが書いてあった。
「瑠璃…いつのまに」
「…そっとおかれたの」
あの野郎、俺の瑠璃に手を出すとは。