我妻はかごの中の鳥

なんだ?と思い後ろを振り返れば、親子連れが座っていた。


父、母、兄、妹。


兄がコーヒー味のミルフィーユを食べていて、妹がキャラメルだった。

仲が良いらしく、隣に座ってる。

兄が小学校低学年くらい、妹が幼稚園くらいか。


次第に『あーん』をし始めて、仲の良さが印象付く。


「瑠璃と同じの食ってんな」

「…あーんもしてる」


どことなく、嬉しそうに瑠璃が見る。

家族団らんの一時。



俺らにはなかった、一時。



「年の差も同じくらいかな」

「……」


俺と瑠璃は、種違いの兄弟だ。


つまり、父が違う。

俺に関しては生まれてすぐ捨てられたから、母さんに育てられた記憶すらない。

しかも父さんってゆーのも、俺の場合は生まれる前に死んだ。


孤児なわけだ。


瑠璃も父親は小さい頃に死んだらしいから、父を知らない面では同じ。


だから。


「…父さん…か」


呼んだことのない呼称に、俺は憧れをほんのすこし抱く。
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